東洋アルミニウムが「前時代的」資金管理業務を改革したら、どんな効果があった?

東洋アルミニウム株式会社

1,001~3,000名 製造・メーカー テレワーク対応 資金繰り効率化 ワークフロー構築 スケジュール予約 資金集中・配分

アルミニウム製品にて国内外で高いシェアを誇る東洋アルミニウムは、国内に 8 つの生産・研究開発拠点および 6 つの関係会社を抱えている。結果として全国各地に散らばる複数の金融機関との取引が発生し、そのやり取りや口座情報の管理に経理・財務部門の業務が逼迫していたという。こうした業務に関して、ウィズコロナ時代にあった柔軟な働き方にも対応するために、同社はどのような手段をとったのか。

抱えていた課題

  • 会計システム刷新を契機に、資金管理業務の見直しが必要になった。
  • 資金情報の取得に電話やFAXが必要で、在宅勤務が進む中、オフィス前提の業務が障害となっていた。
  • 資金繰りもExcelと人手で対応しており、業務の効率化が急務だった。

選ばれた理由

  • いつでもどこからでも利用できるクラウド型サービスであったこと。
  • 複数金融機関の口座・資金管理をワンストップで実現でき、操作性がよかった。
  • 金融系システムで実績が豊富な NTT データが提供している安心感があること。

導入後の効果

  • 入出金明細の自動取得により、月間約9.4時間の業務削減を実現した。
  • VALUX回線導入済みのため、導入は1日で完了し、特別なトレーニングなしに現場定着した。
  • 承認フロー機能により、在宅での送金申請・承認が可能になった。

財務チームの働き方改革を実現するための方法を模索

東洋アルミニウムは、90年にわたりアルミニウムの可能性を追求してきたグローバルメーカーである。食品・医薬品・電子部品の包装材料から、日用品まで幅広い製品に同社のアルミニウム製品は利用されており、アルミニウムを原料とする顔料が使用された自動車用塗料は世界シェアでトップを誇る。

同社グループは、国内だけでも8つの生産・研究開発拠点と6つの関係会社を擁している。各地域に根ざして経済活動を行っていることから、取引のある金融機関は多く、口座情報、入出金情報などを取得して一元管理するためには、電話やFAXで各金融機関に問い合わせる必要があるなど煩雑な作業を伴っていた。働き方改革の一環として変化が求められていた業務の1つだったが、コロナ禍によってさらに対応が急務となった。

同社コーポレート部門 経営管理ユニット 財務チーム 安岡大倫氏は、「FAXを使用するなどオフィスへの出勤を前提とした業務でしたので、コロナ禍で在宅勤務を実施するにあたり支障が生じていました」と振り返る。

「金融機関が提供するIB(インターネットバンキング)サービスを利用する方法もあります。しかし、金融機関によっては入出金件数が少なく、手数料を支払って契約することは費用対効果の観点から現実的ではありませんでした」(安岡氏)

東洋アルミニウムが求めた口座情報の一括取得

このころ東洋アルミニウムでは、ちょうど会計システムの入れ替え時期に差しかかっていたという。同社のコーポレート部門 経営管理ユニット 財務チームの安岡 大倫氏は以下のように振り返る。

「会計システム刷新を契機に、資金管理業務を見直したいと考えました。それまでの業務は前時代的で、資金繰りはExcelを使用し、5人程度の人手をかけて算出していたのです。新システムでは予実分析などの機能を新たに導入したく、そのためにはすべての金融機関情報を一括で取得する必要がありました」(安岡氏)

このように同社では、場所を問わずに柔軟に業務できる環境の実現と資金管理業務の高度化という大きく2つのニーズから、複数金融機関の口座・資金管理をワンストップで実現できるサービスの導入を本格的に進めた。こうしていくつかのサービスを比較した結果、選んだのはNTTデータが提供するWebブラウザベースのバンキングサービスである「BizHawkEye」だった。

クラウド型のマルチバンキングサービスBizHawkEyeを選定

BizHawkEyeはNTTデータの提供する金融決済用のセキュアな回線「VALUX(注 1)」とWebブラウザを組み合わせた、マルチバンク対応のバンキングサービスであり、複数の金融機関との取引を同一インターフェースで安全かつ高速に実施することが可能だ。複数の異なる金融機関の口座情報を一覧で表示するため、それぞれの残高がひと目で把握可能。また、振込・振替などの各種取引も、すべて同じ画面で完結できるため、相手先の銀行に合わせた振込も容易に行うことができる。

注 1:これまでのパソコンバンキングで使用されてきたINSネット(ディジタル通信モード)サービスが2024年1月で終了する。VALUXは、INS回線に代わりパソコンバンキング用接続回線として提供されるNTTデータのサービス。

安岡氏は「色々な情報を集めていく中でBizHawkEyeが目に留まり、さらなる情報をWebサイトで得ながら検討を進めていきました。特定のパソコンでしか動かせないスタンドアロン型のサービスではなく、いつでもどこからでも利用できるクラウド型サービスであることが決め手でした。これならオフィスという場所に縛られることがなく業務を行うことができると思いました」と選定理由を明かす。

さらに「在宅勤務で承認が行える機能も重要でした」と安岡氏は続ける。BizHawkEyeは、送金の申請や承認など、これまで別のシステムや紙を利用するしかなかった「ワークフロー」機能を標準で搭載。本社・支社・営業所など複数口座の一元管理をサポートする「資金集中・配分」機能も有している。

そして安岡氏はもう一点、事務担当者が使いやすいように、ユーザーインターフェースや操作性も重要視したという。「企業の業務システムとして使われる一般的なパッケージ製品に比べると見た目がモダンであり、日本人にとってわかりやすいものでした。デモ画面にて事前に触ったのですが、プライベートで使うアプリとも近いインターフェースで、とっつきやすく、チーム内でも好評でした」と安岡氏は振り返る。

こうしてクラウド型のサービスであるBizHawkEyeを選定したわけだが、関係者から慎重論や反対の声はあがらなかったのだろうか。

「決済にかかわる業務でクラウドサービスを導入するのは初めてだったのですが、金融系システムで実績が豊富なNTTデータが提供している安心感があること、そして働く場所を選ばない環境を実現できることへの期待から、反発はなくスムーズに検討が進んでいきました。また、試算では費用対効果が出ることが明確だったので、BizHawkEye 導入しない理由が見つかりませんでした」(安岡氏)

わずか1日程度で導入が完了

BizHawkEyeの導入作業は、2021年12月に実施。東洋アルミニウムではVALUX回線をすでに導入済みだったこともあり、わずか1日程度で完了したという。

一連の導入工程を振り返り安岡氏は「NTTデータによるサポートを受け、電話ベースで移行や使い方について半日程度教えてもらっただけで導入できました。また、操作の習得に特別なトレーニングが必要なく、現場に戸惑いがなかったことからも、使いやすいツールだといえるでしょう」と評価する。

こうしてBizHawkEyeの導入を終え、その後どのような成果を得ることができたのだろうか。安岡氏によると、これまで抱えていた口座情報の取得・管理は以前に比べて格段に柔軟になっているという。特にBizHawkEyeでは、残高や入出金明細の取得を定期的に実行するというスケジュール機能を搭載しており、パソコンを立ち上げずに実行できる。つまり、パソコンを起動して操作を行うという一手間を解消し、好きなタイミングで情報にアクセスできるようになったわけだ。

安岡氏は「当社の主要取引銀行は5行あり、これらの入金については各行のIBサービスにログインして毎日チェックしていました。BizHawkEyeによって、各IBサービスを利用する手間なく、一括で入出金の状態を把握できるようになりました。まだ運用を始めて間もないため正確な数字はつかめていませんが、試算では財務チームの業務量は月間9.4時間削減できるものと見込んでいます」と話す。

資金効率向上のための土台づくりに寄与するBizHawkEye

今後について安岡氏は、「BizHawkEyeで関係会社の情報を収集し、これから導入予定の資金管理システムと連携することで、グループでの資金効率を上げていけるものと期待しています。将来的には外貨も扱い、海外子会社も対象にできるようになることが理想ですが、まず国内についてはBizHawkEyeを口座情報収集の中心に据える構想です」と話す。

BizHawkEyeの導入によって財務チームの業務改善を進めることができた東洋アルミニウム。このほかに、企業の資金管理の観点からBizHawkEyeがもたらすメリットについて、最後に安岡氏はこう語る。

「日本は低金利時代ですので、現在は資金効率を高めてもインパクトは限定的かもしれませんが、今後金利が上昇局面に入った場合には、資金効率を向上させることが経営上重要になってきます。海外も含めてグループ全体の日次の資金状況を可視化することでグループ内の余剰資金を活用し、有利子負債を極小化出来る体制を今のうちから整えておかなければ金利環境が変わったとき即座に対応できません。将来に向けて強い財務基盤を築くためにも、BizHawkEyeの役割は重要です」