すかいらーくが「経理DX」と「脱ISDN回線」を同時にかなえた、ここだけの秘訣とは
株式会社すかいらーくホールディングス
すかいらーくグループでは、店舗でデジタルメニューブックを導入するなど全社を挙げて DX に取り組んでいる。経理部門も同様に、DX を通してテレワーク対応やセキュリティ強化、コスト削減といった難題を解決している。こうした中、ISDN 回線が 2024 年 1 月に終了するという大きな障壁が立ちはだかる。これにより、入出金といった経理業務に不可欠な一部銀行サービスについて利用できなくなってしまう。DX と共に、ISDN 回線終了への対応が急務となっていた。同社はどのようにして、同時並行で取り組みを進めたのか。
抱えていた課題
- ISDN終了により従来の接続が使えなくなるリスクが顕在化。
- 複数銀行の管理が煩雑であり、在宅勤務対応も急務だった。
- 業務の継続性と効率化を両立する必要があった。
選ばれた理由
- VALUXとの親和性が高く、既存の接続環境を活かした構成が可能だった。
- クラウド型で在宅勤務にも対応でき、導入のハードルが低かった。
- NTTデータの支援体制も安心材料となった。
導入後の効果
- 1000件超の明細取得が一瞬で完了、毎日5〜10分の時短を実現した。
- クラウド上に安全にデータ保存が可能になり、PC保存の手間が不要になった。
- 以前は10~15分かかっていた数千~数万件の振込が一瞬で完了するため、従業員の負担削減に繋がった。
2024年1月でISDN回線が終了…
すかいらーくグループは、ガスト、バーミヤン、ジョナサンなどを直営するレストランチェーンで、国内外に約3100店舗を展開。2021年度の連結売上は2,645億円に上る。
その資金管理を担当するのが、すかいらーくホールディングスの財務チームである。同チームでは、複数の銀行サービスを使って資金管理業務を行う。たとえば、銀行のCMS(Cash Management System)を使った取引先への振り込み、子会社の支払い代行、各銀行の専用システムを使った残高・入出金明細の照会などである。
しかし、その1つである某銀行の専用ソフトにおいて、別サービスに至急移行しなければならない状況が生まれていた。すかいらーくホールディングス 財務本部 経理財務グループ 財務チームの蔭木 英之氏は、次のように説明する。
「その専用ソフトは、会計システムに取り込むための入出金データの取得、給与振り込み、税金の納付などで活用していました。ところが、同ソフトで利用しているISDN回線が2024年1月に終了するため、新たなサービスに移行する必要があったのです」(蔭木氏)
ISDN回線はアナログ電話回線を使ったデジタル通信網であり、インターネット回線が普及する前から銀行のオンラインサービスで活用されてきた。しかし、固定電話網のIP化に伴ってサービスが終了するため、新たな回線とそれに対応した新たなサービスが求められていた。ここからは新回線への対応とともに、経理DXを進めるすかいらーくの取り組みを紹介する。
ISDN回線に代わる、低コストで簡単な最適解とは
新たな回線とサービスを検討していた同社は、複数の銀行ソフトも含めて比較・検討を行った。その結果、NTTデータが提供するVALUX回線と「BizHawkEye」を導入することになった。同サービスを提供するNTTデータ 第三金融事業本部 e- ビジネス事業部 e- ビジネス営業統括部 e- ビジネス商品企画営業担当 竹内 勇登氏は、その特長を次のように説明する。
「現在、すかいらーくグループさまと同様に、ISDN回線の終了に伴って後継サービスを検討されているお客さまが多数いらっしゃいます。
VALUX回線とBizHawkEyeはその後継サービスの1つです。VALUX回線はISDN回線に代わる銀行取引用のセキュアな回線サービスです。そしてBizHawkEyeは、VALUX回線で利用できるマルチバンク対応の口座・資金管理サービスであり、Webブラウザを使って1つのIDとパスワードで複数の銀行にログインし、資金管理を行うことができます」(竹内氏)
すかいらーくグループがBizHawkEyeを選択したのも、まさにVALUX回線の安全性やマルチバンク対応などのメリットを評価した結果だ。蔭木氏は選定理由を次のように説明する。
「VALUX回線については、別の銀行サービスですでに活用していましたので、その安全性は確認済みでした。BizHawkEyeについて最も重視したのは、現在の専用ソフトの機能をすべて網羅していることでしたが、BizHawkEyeはその条件を満たしていました。
さらに、マルチバンク対応であること、Webブラウザベースで在宅でも業務できること、そして他のサービスに比べて価格がリーズナブルだったことも選定の理由でした」(蔭木氏)
こうして同社は、VALUX回線とBizHawkEyeを導入。2022年5月から各銀行への利用サービスの申し込み、VALUX回線の追加契約、BizHawkEyeの契約手続きなどを開始した。その後、NTTデータのサポートを受けながら口座登録などの初期設定を行い、2022年10月から一部で本稼働した。
1000件超の入出金データ取得が爆速化
BizHawkEyeの本格稼働を開始したが、まだすべての機能を利用しているわけではない。現在、行っているのは、会計システムに取り込むための入出金データの取得だ。データは毎日取得するためその効果は大きいと、蔭木氏は次のように説明する。
「明細の取得スピードは以前よりも早くなりました。日によっては1000件を超える明細を取得しますが、BizHawkEyeだと一瞬です。また、以前は入出金データを取得したらパソコンに保存する必要がありましたが、BizHawkEyeはクラウド上に安全にデータを保存できるので、その点も助かっています。1回あたりの時間短縮は5~10分程度ですが、毎日の作業なので、その効果は決して小さくありません」(蔭木氏)
また、テレワークの観点でもメリットがあったと、蔭木氏は次のように続ける。
「従来の専用ソフトは、オフィスに設置した特定のパソコンでしか利用できなかったので、必ず出社しなければなりませんでした。しかしBizHawkEyeであれば、電子証明書を取得してログインさえできればどのパソコンでも利用できるので、コロナ禍のテレワークにも対応できます」(蔭木氏)
数万件の振り込みも“一瞬”、経理DXも実現で全社展開か
現在、同社は入出金明細の取得に続いて、給与振り込みのテストを実施している。これも、以前使っていた某銀行の専用ソフトで月に2回ほど行っていた業務だ。テストで問題がなければ、2022年11月から本番稼働する予定である。
「従業員が多いので、振込件数は数千~数万件になります。以前の専用ソフトでは10~15分はかかっていましたが、BizHawkEyeであれば一瞬で完了する見込みです。また、その後は税金の納付、賃料振り込みなどもBizHawkEyeで実施する予定です」(蔭木氏)
しかし、給与振り込みについては、送信する給与データにエラー情報が含まれていると、特定の銀行で受け付けられないという問題が起きた。従前の専用ソフトでは問題がなかったため、導入後に判明した問題だが、現在、銀行とのやり取りも含めてNTTデータの綿密なサポートを受けながら、解決のメドが立っているという。
ISDN回線の終了をきっかけにBizHawkEyeを導入したすかいらーくグループは、現在、全社でDXを推進し、社内のさまざまなシステムの刷新を進めている。
「たとえば、店舗ではデジタルメニューブックや配膳ロボなどを導入しています。経理部門でも、2023年度に親会社と子会社に経費精算システムを導入し、グループ全体の資金管理業務の効率化を計画しています。それに伴って、今後、各子会社にBizHawkEyeを導入する可能性もあると思います」(蔭木氏)
すかいらーくグループと同様に、ISDN回線を用いて銀行とやりとりしている企業は多い。2024年1月のISDN回線の終了は、これらのすべての企業にとって共通の課題だ。VALUX回線とBizHawkEyeを用いて新しいサービスに移行し、さらに業務効率化まで実現したすかいらーくグループの取り組みは、こうした企業の参考になるはずだ。