前田建設工業の経理改革が「大成功」したワケ、カギとなる「バンキングシステム」とは
前田建設工業株式会社
総合建設業として準大手ゼネコンに位置する前田建設工業。同社では、保有口座数が多く、振込などの経理業務が煩雑化してしまうという課題があった。同社はコロナ禍にあった2020年度に各支店の経理業務機能を全社で平準化して、シェアード化する業務改革に着手。改革はシェアード化、組織変更を伴った集約可能な業務を本店集約するという過程を経て遷移する。結果的に、保有口座数はそのままで、出納業務にかかる時間や手間を大幅に効率化することに成功した。前田建設工業はいかにして改革を成功させたのか。詳しく解説する。
抱えていた課題
- 口座数多く出納業務が煩雑
- テレワークと合わない運用体制
選ばれた理由
- 複数金融機関を1つのログインIDで管理できる
- 接続金融機関数が多い
- クラウドサービスとしてテレワーク対応できる
導入後の効果
- 出納作業を約1/10に削減
- 支払業務を本店へ集約化
- 担当者の業務負荷を軽減
前田建設工業が出納業務で抱えていた「ある課題」
前田建設工業では、本店と、国内の10支店のうち6支店に経理部門があり、全社約50名体制で業務を行ってきた。支店経理部門は、おもに受注した工事の建設現場及び内勤部門の支払伝票のチェック・承認・支店内の内部統制業務などを担っている。
経理業務のうち出納業務については、基幹システムと各金融機関のインターネットバンキングを用いて本支店間で資金のやり取りをしていた。同社の出納業務について、「管理口座は支店ごとに複数あり、全社ではメガバンクや地方銀行などを併せて約300~400口座に上り、その数の多さから出納業務が煩雑になってしまうという状態が続いていました」と話すのは前田建設工業 経理部資金グループ主幹の元木敦氏だ。
元木氏によると、前田建設工業は、新型コロナウイルスが流行し始めた2020年2月ごろよりバックオフィス業務の改革に着手し、経理業務のシェアード化による業務改革を進めるため出納業務に関しても新たなツール導入を検討することになったという。
では同社は、どのように出納業務の効率化を実現したのだろうか。以下で詳しく見ていこう。
複数の口座取引も「楽勝」の方法とは
前田建設工業が改革で目指したのは、支店間で分散して行っていた出納業務のうち可能な業務を集約し、効率化することだった。
しかし、同社が直面していた課題は、出納業務の煩雑さだけではなかった。改革に着手した2020年はコロナ禍で、前田建設工業でもテレワークへの移行が進められていたが、インターネットバンクは、本支店にある共有PC2台程で運用していたため、出社を伴う必要があり、テレワークへなじまないという課題があったのだ。
こうした数々の課題を解決するための方法を模索していた前田建設工業は、グループ会社で導入実績があるマルチバンクWebサービスの存在を知る。
そのサービスが、NTTデータの「BizHawkEye」だ。同サービスは、NTTデータが提供するセキュアな回線サービス「VALUX」と組み合わせて利用するもので、PCに証明書をインストールし、Webブラウザから1つのIDとパスワードで複数の金融機関にログインし口座情報の一元管理ができる。

前田建設工業がBizHawkEyeについてグループ会社の担当者にヒアリングしたところ、業務要件にマッチしていると考えられたため、早速導入検討を進めていったという。
「当時はマルチバンクサービスが出たばかりで、対応金融機関数の少ないサービスばかりであった印象。その点、BizHawkEyeは接続金融機関数も比較的多く、支店を含めた取引にもある程度、対応できる点が決め手となりました」(元木氏)
BizHawkEyeの導入シーンについて、NTTデータ e-ビジネス事業部 第二サービス統括部 インダストリビジネス企画営業担当 隅田 実里氏も、「ニーズとして聞くことが多いのは、各行インターネットバンキングからの乗り換えで、銀行ごとに発生するID管理と認証作業の煩雑さがあります」と話す。
BizHawkEyeはマルチバンクサービスのため、1回のログインで複数の金融機関と接続可能である点にメリットを感じてもらうことが多いという。

e-ビジネス事業部 第二サービス統括部
インダストリビジネス担当
隅田 実里氏
では、前田建設工業では実際にどのようにBizHawkEye導入を進めていったのだろうか。
元木氏は、「BizHawkEyeをメインで使用するのは本店という想定で、各支店で管理する口座や一部の集約可能な業務を本店に集約し業務改革を進めました」と導入プロセスについて振り返る。
同社ではまず、本店口座で試験運用を行い、従来のインターネットバンキングでの業務からBizHawkEyeへの切替について検討した。初めに取引照会や残高確認を実施して、続いて振込や資金移動をBizHawkEyeでできるのかを検証した上で、各支店が管理する銀行口座をBizHawkEyeで利用できるよう、各金融機関の手続きを進めたという。
工数「約1/10」にまで低減できた作業とは
BizHawkEye導入後の成果については、まず「担当者の業務負荷軽減」が挙げられると元木氏は振り返る。
たとえば、取引明細取得について、導入以前は、金融機関ごとにインターネットバンキングを切り替え、それぞれデータを取得する作業が発生していた。そのため金融機関の数だけ同じ作業が発生する状態だった。BizHawkEye導入後は、それが1回の作業に集約され、かつ、ボタン1つでデータが取得されるため、大幅に業務効率が高まったという。
さらに元木氏は、残高や入出金明細の取得を定期的に自動で実行できる「スケジュール機能」を活用することで、体感ではデータ取得作業の工数が約1/10に低減したとも話す。
そのほかの施策として店と本店で重複して行っていた支払業務を本店集約にすることで、作業は本店の1名で対応が可能になったという。
「インターネットバンキングのための共有PCも本店へ集約し、支店にあったPCのうち不要となったものは返却しています」(元木氏)
また、BizHawkEye導入については、NTTデータのサポートも魅力的だ。

隅田氏によると、BizHawkEyeの導入に際しては、「初期設定サポート」として、サポート担当者がオンラインで接続して遠隔でテクニカルサポートなどを行うほか、電話によるサポートチャネルを用意している。
また、「運用定着サポート」メニューでは、オンラインミーティングを通して、BizHawkEyeをどのように運用したいのかの目標や運用の定着度合いなどの目標を設定し、自社に合った活用方法や機能についてサポートを行っている。
実際に前田建設工業の事例でも、口座情報を登録など、導入初期の段階ではテクニカルサポートをよく利用したと元木氏は振り返る。
経理DX実現の「助っ人」に?
こうして経理業務の効率化を実現した前田建設工業だが、今後の展望について元木氏は「出納業務については、各金融機関の口座をBizHawkEyeに登録し、集約して一部の業務を行うことは実現できました」と話した上で、本店に引き継いだ口座数は多いままという現状を鑑み、「今後は、保有口座の機能的な集約について検討したい」と意気込む。
前田建設工業のように、BizHawkEyeを導入することで、複雑だった経理業務を大幅に効率化することが可能になる。経理分野における生産性向上や業務効率化を目指す際は、NTTデータのサポートを受けながら、導入してみるのも一手だろう。
「NTTデータはBizHawkEyeの導入だけでなく、経理業務全体のDXを進めていくパートナーとしての役割を果たすことが可能です。ぜひお気軽にご相談いただければと思います」(隅田氏)

前田建設工業
経理部 資金グループ 主幹
元木 敦氏田建設工業経理部 資金グループ 主幹元木 敦氏