工数は“10分の1”に、日本自動車ターミナルが経理業務を「劇的改善」できたワケ

日本自動車ターミナル株式会社

51~500名 運輸・物流 振込・照会業務の負担軽減 マルチバンク対応 照会業務 振込業務 スケジュール予約

日本最大のトラックターミナルである京浜トラックターミナルをはじめ、全国的な物流ネットワークの拠点となる公共トラックターミナルを都内 4 カ所で運営する日本自動車ターミナル。同社は、2024 年 1月で ISDN 回線の終了に伴い、従来の照会、支払業務を担うシステムの刷新を検討していた。従来システムを経理業務に必要な銀行サービスが利用可能な形で刷新したこ と で 、担当者の業務効率が向上し工数は 10 分の 1 になった。業務効率化を実現した同社がどのような取り組みを進めたかを紹介する。

抱えていた課題

  • ISDN回線を使った旧システムが老朽化し、更新が急務だった。
  • 複数銀行の残高照会や振込処理に毎日多くの時間がかかっていた。
  • 業務効率の低下が経理部門全体の負担となっていた。

選ばれた理由

  • 既存の業務フローを大きく変えずに導入できた点が魅力だった。
  • マルチバンク対応で複数口座の一括管理が可能だった。
  • 操作性が直感的で、担当者の習熟もスムーズに進んだ。

導入後の効果

  • 業務そのものの工数は、体感値で 10 分の 1 程度に縮小された。
  • 業務の標準化と効率化が進み、経理部所属なら誰でも操作できるようになった。

日常業務を変えずに移行できるバンキングサービスが必要だった

日本自動車ターミナルは、東京23区内に4カ所のトラックターミナルを運営し、トラックの荷物が行先方面別に積み替えられる施設「荷扱場」を提供するトラックターミナル事業と、商品の一時保管、流通加工が可能な高機能型物流施設を提供する物流センター事業を手掛けている企業だ。物流の効率化や都市機能の向上、東京と地方の経済をつなぐ重要な役割を果たしている。

同社は、2024年1月よりサービス終了が予定されているISDN回線について課題を抱えていた。経理部経理課主任の塚田龍之介氏は、「これまで複数の金融機関と取引しているが、残高照会や入出金、振り込みなどの処理をマルチバンクで一元管理していた」と話す。

処理を担う従来システムは、「2000年以前より使用しており、ISDN回線をベースとしていた」(塚田氏)ため、ISDN回線が終了することによってシステムの刷新が必要となったのだ。

また、システム自体も不調が発生するようになっており、多くの金融機関との残高照会や取引履歴を高頻度で確認する必要がある担当者の業務ストレスや効率性を鑑み、「ISDN回線廃止まで少し時間があったものの、新システムの選定を開始した」ということだ。

新システムに求められた要件は、「これまでのマルチバンクによる業務フローを大きく変えず、かつ日常的に行う業務を変えずにシステム移行ができること」である。日本自動車ターミナルが経理の業務フローは大きく変えず、効率性を大きく改善するまでにどのような軌跡をたどったのだろうか?

取引銀行が複数のため「マルチバンク管理」は譲れないポイント

新システム選定の情報収集を進める中で、ISDN廃止に伴う新しい回線「VALUX」接続に対応したWebバンキングサービスが検討の俎上に載った。それがNTTデータが提供する「BizHawkEye」だ。

塚田氏は、従来システムをそのまま使う選択肢や、取引先の各金融機関が提供するインターネットバンキング活用との比較検討の結果、「社内規定により、取引のある各金融機関の残高管理、入出金を毎日確認する必要があり、金融機関ごとにインターネットバンキングを利用する運用では、日々の業務量が膨大になってしまう」ことが懸念されたと話した。

その点、BizHawkEyeはマルチバンク管理に対応しており、「これまでの業務フローで行っていること、やりたいことが変わらずできること」が決め手となった。

さらに、機能面では、照会業務や月末に発生する振込業務において「基幹システムから振込データを作成し、数クリックで容易に振込業務が可能になる」点や、そもそもの基幹システムとの連携についても、「システム改修を要せずに導入できる連携性の高さが確認された」点がBizHawkEye採用のポイントとなった。

導入は当初予定を1年前倒しし、2022年10月からの運用開始となった。この理由について、同社 経理部経理課主任の城山貴弘氏は、「従来システムに不調が起こり、残高照会や入出金管理に非常に時間を要することになったのが要因の1つだ」と話した。

BizHawkEyeは、これまでの業務内容をそのままに、さらなる業務効率改善が実現できるとことが確信されたため、当初予定よりも導入時期を早めたということだ。

旧システムからの移行作業は、取引金融機関への申請手続きやVALUX回線の取得などに時間を要したものの「作業自体はイメージどおりに進んだ」と城山氏は述べる。

「導入は、何段階かに分けて、我々自身も習熟しながらすべての金融機関に対応していきました。BizHawkEyeを操作する担当者は多く、業務自体も月に1回しか発生しないものがあるため、どのように業務が完結するか、担当者が理解できるよう検証期間を設けるとなると、相当の期間が必要だったのです」(城山氏)

業務そのものの工数は、体感値で約1/10に

BizHawkEye導入後は「日常的に経理業務として行う業務はBizHawkEyeで対応している状況で、システムの切り替えは完了している」と塚田氏は述べる。

導入効果について、塚田氏は「最もメリットを感じているのは照会業務と支払業務だ」とする。たとえば、照会業務ではスケジュールの設定が可能だ。朝の9時、16時というように、残高と入出金の照会を行うよう予約設定しておけば自動的に処理が完了する仕組みだ。

機能概要の説明
BizHawkEye 7つの特長 スケジュール機能

以前のシステムは立ち上げから照会まで20~30分ほど要しており、「導入後は、タイミングを見て確認しに行けばいいので、5分かからないくらいに短縮されている」という。これは1カ月で約20時間の削減効果となり、「ISDN回線が情報を取得していくための待機時間なども含めると、業務そのものの工数は、体感値で10分の1程度に縮小された」と塚田氏は話した。

さらに、照会業務の自動化により、担当者の業務の柔軟性が高まっただけでなく、経理部所属なら誰でも操作できるようになったことも大きな効果だといえる。

支払業務も同様で、これまでは処理が完結するまで担当者が見届ける必要があり、「ISDN回線の処理待ち時間などのリードタイムがなくなり、その分省力化、効率化が実現された」ということだ。

「BizHawkEye導入後は、ボタンを押したら受け付けが完了し、業務効率が高まった」と城山氏は話す。「マルチバンクサービスなので一度のログインで複数の金融機関と接続可能で、画面も直感的に操作可能なので使い勝手は高い」とした。

担当者が日中、ほかの業務に従事でき、時間の有効活用が可能になったのは大きなポイントだといえよう。

BizHawkEyeの7つの特徴の概要図。

POINT1、ID/パスワード/トークンを1つに。1度ログインするだけで、登録したすべての口座の取引が可能。POINT2、マルチバンク対応。異なる金融機関の取引を一元管理。POINT3、ソフト管理が不要に。Webブラウザベースで提供され、インターネット環境があればどの端末からでも利用可能。POINT4、強力なセキュリティ。サービスの利用や送金処理の際は、電子証明書による端末認証に加え、二次元コードを用いたトランザクション認証を採用。POINT5、ワークフローを標準搭載。送金の申請・承認など、これまで別のシステムや紙を利用するしかなかった「ワークフロー」機能を標準で搭載。POINT6、スケジュール予約も可能。残高や入出金明細の取得を、定期的に実行するスケジュール機能を搭載。POINT7、資金集中・配分。本社・支社・営業所など複数口座の一元管理をサポートする「資金集中・配分」機能を提供。
※1 トークン:一定時間ごとに変化する使い捨てのワンタイムパスワードを生成する機器 ※2 電子証明書:電子的に作られた身分証明書のようなもの。電子証明書をパソコンに保存し、サービス利用時に提示することで、正当なパソコンであることを確認します ※3 トランザクション認証:取引内容を二次元コード化し、専用トークンで読み取り、確認することで、取引(トランザクション)の内容が通信途中で改ざんされていないことを確認する認証方法

さらなる経理DXに向けた情報提供、支援に期待

今後の展望について、城山氏は「基幹システムの改修が伴うため、BizHawkEyeで実現可能な機能がほかにもあることは認識しているものの、現状は今以上の発展は難しいだろう」とした。しかし、これは「現状、利用している機能だけで業務課題を解決し、経理業務の自動化、省力化を実現した」ということの裏返しともいえる。

塚田氏は、「弊社はトラックターミナル事業と物流センター事業がビジネスの柱だ」とした上で、「現在建物の老朽化に伴い、建て替えや再開発を順次進めているところだ」と話した。

「新しい施設ができれば、取引するお客さまも増えていき、我々の支払業務も今までになかったものが増えていくことが考えられます。新しい業務要件、課題に対応し、さらなる経理DXを実現していくためにも、これまで以上にNTTデータの支援、協力が必要になってくると思います」(塚田氏)

BizHawkEye導入によるWebバンキング刷新により、将来を見据えた拡張性の高い基盤を整備することができた。今後も必要な情報提供をいただきながら、経理業務の変革のパートナーとしての役割に期待したい──塚田氏はこのように締めくくった。