アクトグループが約20の口座情報を一元管理し、業務時間を「1/3」に短縮した方法
アクトグループ株式会社
店舗運営や卸(おろし)を営む企業では、売掛金管理と迅速な入金確認、その後の物流が顧客満足度に大きく影響する。ところが多店舗を運営していると、そのぶん銀行口座が増えて経理処理は煩雑になってしまう。テニス用品を中心に企画から小売まで幅広く手がけるアクトグループは、グループ化による経営の効率化を図ろうとする中で、20 ほどある口座をいかに効率的に管理できるかに悩んでいた。同社の経理・財務オペレーションの高速化と、資金管理の高度化に貢献した方法とは?
抱えていた課題
- 20以上の銀行口座を保有していて、ソフトをインストールした PC でしか業務ができなかった。
- グループ各社で資金管理が分散し、資金の流れが不透明だった。
- 経理業務の負担が大きく、ガバナンス強化も課題だった。
選ばれた理由
- 複数口座の一元管理や資金集中配分機能により、グループ全体の資金管理効率化が期待できた。
- クラウド型で在宅勤務にも柔軟に対応できる。
- NTTデータのサポート体制が導入を後押しした。
導入後の効果
- 複数の社員で業務対応できるようになり、在宅勤務でも安定した運用が実現できた。
- 資金繰りの可視化と操作性が向上したことで、給与支払いや月末の支払いに合わせた資金移動がスムーズになった。
- クラウド経由での明細取得が可能となり、業務時間が大幅に短縮された。
グループ経営に立ちはだかる資金管理の課題
アクトグループは、テニス用品の企画・製造、卸、そしてECを含む小売までを網羅する企業グループの持株会社で、3つの店舗と14のネットショップを運営している。傘下には、グループのルーツであり40年以上の歴史を持つテニス・バドミントン専門店「キャピタルスポーツ」など、スポーツ事業を展開する3社に加え、BPOやWebシステム開発などを請け負う「キャピタルナレッジ」がある。
持株会社のアクトグループを設立したのは2019年。まずはグループ内の経理・総務などの管理部門について、同社に移管し集約することとした。グループ化に際して、アクトグループ代表取締役社長の新谷和敬氏を悩ませたのは、資金管理の仕組みだった。
「多くの店舗を運営していることから、グループ全体で20以上の銀行口座を持っています。毎日すべての口座をチェックして入金データを販売管理システムや会計システムに入力するのですが、各口座の入出金明細をネットバンキングで取得するだけでも大変な手間がかかります」(新谷氏)
そこで各社は、口座を一元的に照会できるシステムを導入して効率化を図っていたが、それはソフトをインストールしたPC以外からは利用できないスタンドアロン型のもの。そのままの仕組みで持株会社のスタッフが全口座の管理を引き受けたのでは、全社の業務が滞りかねず、効率化にはつながりにくい。
この状況下で、アクトグループでは、どのようにして資金管理業務の効率化を実現したのだろうか。
スタンドアロン型の資金管理システムが抱える問題
アクトグループの経理業務に携わる担当者は、兼務者も含めて6名いる。だが、スタンドアロン型の資金管理システムでは同時にデータを取得できる人数に制限があるため、業務上のボトルネックとなってしまう。しかも、資金管理システムが入っているのは、権限の関係から新谷氏のPCのみだ。
「担当者がシステムを操作したい場合、私が席を外している間を見計らってデータを取得しなければなりませんでした。また、担当者の権限を越えた操作が可能なことから、操作ミスで意図しない資金移動をしてしまうなどのリスクがあり、統制上も好ましくありませんでした」(新谷氏)
クラウド型のマルチバンキングサービスBizHawkEye
会計システムや業務の統合を進めつつ、複数人で利用するのに適した資金管理システムはないかと模索していた新谷氏。ある日、1枚の広告紙面が目に入った。NTTデータが提供するWebブラウザベースのバンキングサービス「BizHawkEye」だった。
BizHawkEyeはNTTデータの提供する金融決済用のセキュアな回線「VALUX(注1)」を組み合わせたマルチバンク対応のバンキングサービスであり、複数の金融機関との取引を同一インターフェースで安全かつ高速に実施することが可能だ。複数の異なる金融機関の口座情報を一覧で表示するため、それぞれの残高がひと目で把握可能。また、振込・振替などの各種取引も、すべて同じ画面で完結できるため、相手先の銀行に合わせた振込も容易に行うことができる。
なんといってもBizHawkEyeの特徴は、クラウドサービスであることを活かして、1契約で100ユーザーまでユーザー毎に権限の設定や、搭載されているワークフローを利用することで上席が操作の承認を行うことができることだ。
この機能を活用することで、これまで新谷氏の1台のPCでしかできなかった業務を複数の社員がそれぞれのPCで安心して操作することが実現すると気づいた。
注1:これまでのPCバンキングで使用されてきたINSネット(ディジタル通信モード)サービスが2024年1月で終了する。VALUXは、INS回線に代わりPCバンキング用接続回線として提供されるNTTデータのサービス。
新谷氏は「他にも同じようなサービスがないか、私なりに調べてみたのですが、BizHawkEyeが唯一の選択肢でした。費用面でも、それまでのスタンドアロン型システムと同じ価格帯でしたので、置き換えにためらいはありませんでした」と選定理由を明かす。
導入過程では、まだあまり知られていないサービスということもあり、各金融機関との調整に手間取ったものの、BizHawkEye自体の導入作業は順調に進んだ。
「金融機関の業界用語を理解するのが難しかったのですが、NTTデータに電話すると丁寧に説明してもらえたので助かりました。よくサポートしていただいて感謝しています」と新谷氏は振り返る。こうして導入を進め、現在までに約20口座の利用手続きを終えている。

明細の取得にかかる時間はインターネットバンキングの30分の1に
こうしてアクトグループでは、2022年1月からBizHawkEyeの利用を開始。導入後の日常業務において、操作面での問題は特に起きていないという。
「画面のデザインが直感的にわかりやすく、インターネットバンキングに触れた経験があれば、とまどうことなく使用することができると思います。また今後、新しい担当者が増えたとしても、各金融機関独自のインターネットバンキングの使い方を覚えなくても、BizHawkEyeの使い方だけを習得すればいいので、勉強するコストが少なくて済みそうです」(新谷氏)
業務面では当初目指したとおり、アクトグループの経理責任者がBizHawkEyeを通じてグループ内のすべての入出金明細を取得し、販売管理システムおよび会計システムへの入力を行えるようになっている。グループ経営では、日々の入出金の確認だけでなく、資金繰りに合わせて集中・分散のオペレーションも必要だが、その点においても利便性が高まった。新谷氏は「BizHawkEyeによって資金の流れがわかりやすくなり、給与支払いや月末の支払いに合わせて資金を集中させるのが楽になりました」と話す。
また、業務効率も大幅に引き上げられたという。
「取得した入出金明細を印刷し、各システムのデータと突き合わせて入力作業を行うのですが、インターネットバンキングだけを利用した場合と比較すれば、業務時間は3分の1に短縮できています。銀行によって出力される明細のフォーマットが異なりますので、それが統一されるだけでもずいぶん効率が上がります。明細の取得に関しては30分程度かかるところ、1分ほどで済みます」(新谷氏)
さらに新谷氏は、「BizHawkEyeではユーザーごとに権限を設定することができるので、一般の経理担当者は振込のデータを作れても、承認はできないようにしています。こうすれば誤操作を怖がらずに済みますし、万が一問題が起きた場合でも、あらぬ疑いをかけられる恐れがありません」とコンプライアンスの向上や心理的な負担の軽減にもつながっていることを説明する。
またBizHawkEyeはWebサービスであるため、他の経理担当者は、以前のように合間を見て新谷氏のPCを使う必要もなくなっている。自席で業務を進められるようになったことで業務の煩わしさが解消されたのも大きな効果だ。
アフターコロナを見据えてグループ経営を強化
アクトグループの1社に、システム開発などを担うキャピタルナレッジがある。同社はこれまでにミャンマーへ進出して現地法人を設立し、オフショア開発体制も整えてきた。新谷氏はミャンマー等の国外へ出向くときもあるというが、移動時や空港など場所を気にせず利用できるのもBizHawkEye導入後のメリットだ。
「以前のスタンドアロン型の資金管理システムを使用しているときは、会社のPC以外では利用できないため気を遣いました。BizHawkEyeはWebアプリケーションですので、外出時でも承認できるのは良い点ですね」と話す。キャピタルナレッジでは現在、モンゴルへの展開も進めているところだといい、グループの拡大にBizHawkEyeが貢献することだろう。
最後に新谷氏は、今後の展望をこう語る。
「BizHawkEyeでは総合振込や納税も利用できるため、今後は利用範囲を広げた活用を検討しています。コロナの影響もあり業績は楽観視できませんが、グループ化によるコスト削減などの施策によって、アフターコロナを筋肉質な企業体で迎えられるよう、総力をあげているところです。現在、持株会社のアクトグループが担っているのは、グループ内の経理・総務などの管理部門までなのですが、2022年度には会計以外のシステムおよび物流についても統合する予定です」